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きいて、かく。ブログ


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#044『表情や声のトーンの変化に気づく』
「はい、だいたい、これで大丈夫です」 先日、ある会社の社長さんの本づくりで、原稿を読んでいただいたあとの打ち合わせでのことです。社長は口ではそう言ってくださったんですが、顔がまったく笑っていなかったんです。 ああ、これは全然大丈夫じゃないな、と思いました。そこで話を切り替えて、「ぶっちゃけ、どのあたりが気になっていますか」と聞いてみたんです。すると、「実は……」と、本当に直したかったところを話してくれました。あのまま言葉だけを受け取って終わっていたら、納得のいかない本ができあがっていたかもしれません。 人の本音は、言葉より先に、表情や声に出ます。 話しているうちに、目がきらきらと輝きはじめた。ある話題になったとたん、急に口が重くなった。照れながらも、どこかうれしそうに話している。声が少し震えた。こうした小さな変化は、「今、この人の心が動いている」というサインです。 目が輝いたら、その話をもう少し掘ってみる。口が重くなったら、無理に踏み込まず、少し話題をずらしてみる。言葉だけでなく、こうした変化を手がかりに、質問の向きを変えていくんです。...
3 日前


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#043『相手の発言に「いいですね」のひと言を添える』
子育ての本を読むと、よくこんなことが書いてあります。子どもが何か話したら、まず「そうなんだ」と受け止めてあげましょう、と。 講座でこの話をしたとき、受講生の方が深くうなずいてくれました。ひと言受け止めてもらうだけで、子どもは「わかってもらえた」と安心して、次の言葉が出てくるようになる。自信を持って話せるようになるんですね。 実は、大人もまったく同じです。 インタビューを受ける人は、たいてい不安を抱えながら話しています。「こんな話、面白いのかな」「これ、記事になるのかな」。実際に、話の途中で「いや、こんなの記事になりませんよね」と、自分から引っ込めてしまう方もいます。 でも、面白い話になるかどうかは、こちらで何とかします。それがプロの仕事ですから。相手には、余計な心配をせず、好きなだけ話してもらいたい。 そのためにあるのが、「いいですね」のひと言です。 相手がいい話をしてくれた瞬間、本質を突くような言葉が出た瞬間を逃さず、「それ、いいですね」「今の話、すごく大事だと思います」と、はっきり言葉にして返す。すると相手は「この方向で話していいんだ」と確信
4 日前


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#042『相手の言葉をそのまま繰り返し、「聞いていますよ」と伝える』
「実は、軽井沢に別荘がありまして」 こう言われたら、僕はまず「軽井沢なんですね」と返します。 それだけ?と思われたかもしれません。でも、これがなかなかあなどれないんです。相手の言葉をそのまま繰り返す、いわゆる「オウム返し」には、少なくとも三つの効果があります。 一つ目は、「ちゃんと聞いてくれている」という安心感を、相手に与えられること。相づちだけだと、本当に伝わっているのか、相手は意外と不安なものです。自分の言った言葉が返ってくると、「よし、届いている」とわかります。 二つ目は、相手が「自分の言葉を大事にしてもらえた」と感じてくれること。軽井沢、という一語を受け取って返すだけで、その言葉を丁寧に扱ったことが伝わります。 三つ目は、少し裏話になりますが、こちらが次の質問を考える時間をかせげることです。言われたことを繰り返すだけなら、頭はほとんど使いません。その間に、空いた頭で「次は何を聞こうか」と考えられるんです。 ただし、やりすぎは禁物です。何を言っても「〇〇なんですね」「〇〇なんですね」とただ繰り返していたら、相手は「この人、本当に聞いてるのか
5 日前


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#041『話す速さやトーンを、相手に合わせる』
同じ話をしているのに、なぜかこの人とは話しやすい。逆に、どこか話がかみ合わない。そんな違いを感じたことはありませんか。 その差は、話の中身よりも、話す速さや声のトーンから生まれていることが多いんです。 心理学では「ペーシング」と呼ばれる技術です。相手の話すスピード、声の高さや明るさ、場の雰囲気に、こちらを合わせていく。たったそれだけで、相手は「この人とは波長が合うな」と、無意識に感じてくれます。 以前、ある地方の建材メーカーで、僕と同世代の担当者の方にお話を聞いたときのことです。気がつくと僕は、いつもより少しくだけた、中高年のおじさん同士のノリで話していました。「最近、課長職ってしんどいっすよね」「わかります、わかります」。あとで録画を見返したら、二人ともほとんど同じ顔をして笑っていて、自分でも驚きました。 もちろん、いつもこの調子というわけではありません。相手が20代の女性なら、その年代の方が話しやすい言葉づかいやテンポを意識します。相手がゆっくり言葉を選びながら話す人なら、こちらもゆっくり。前のめりに早口で話す人なら、こちらも少し前のめりに、
7 日前


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#040『共通点を先に見つけて、自然に話題にする』
「えっ、ご出身、新潟なんですか。僕もなんです」 こんなひと言で、初対面の相手との距離が一気に縮まった経験はありませんか。共通点が見つかった瞬間、相手はこちらのことを「なんだか昔から知っている人」のように感じてくれるんです。 前回は、自分の失敗談を先に話して、相手の心をほぐすお話をしました。共通点も、同じように相手の警戒心をとく、大事な鍵です。しかも、失敗談よりずっと見つけやすい。 ポイントは、その場で探すのではなく、先に見つけておくことです。 少し前に、島根県の海沿いの町にある会社の社長さんを取材しました。下調べをしていて、その町を以前、別の取材で訪ねたことを思い出したんです。そこで本題に入る前に、「実は以前、こちらに伺ったことがあるんですよ」と切り出しました。その町が人気ドラマのロケ地になった話でも、ひとしきり盛り上がりました。さらに「僕も新潟の生まれなので、日本海側の町には親しみがあるんです」と添えると、社長の表情が、ぐっとやわらいだんです。 出身地、通っていた学校、趣味、好きな球団、子育て。相手のSNSやプロフィールを見ておくと、共通点のタ
10月30日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#039『失敗談や恥ずかしい話ほど、場をほぐす』
前回、まず自分から話しましょう、とお伝えしました。では、何を話せばいいのか。いちばん効くのは、自慢話ではなく、失敗談です。 初対面で自慢話をされると、ちょっと身構えてしまいますよね。「すごいですね」と言いながら、心のどこかで距離を置いてしまう。反対に、「実はこんなドジをしまして」と打ち明けられると、ふっと肩の力が抜けます。「この人、思ったより話しやすそうだな」と感じるんです。 僕にも、とっておきの失敗談があります。駆け出しのころ、用意した質問票ばかり見ながら取材をしていたら、終わったあとに編集者から「相手の顔、全然見てなかったね」と言われたんです。あれは本当にショックでした。この話をすると、同業の方はもちろん、営業の方や学校の先生も「わかります」と笑ってくれます。 ただ、失敗談なら何でもいい、というわけではありません。ここが少しむずかしいところです。 僕の講座で、こんなやりとりがありました。ある受講生の方が、初対面では「私、すごい方向音痴で、引っ越すと実家にも帰れなくなるんです」と話すようにしている、と教えてくれたんです。かわいらしくて、僕も思わ
10月29日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/信頼をつくる編/#038『まず自分から話す。返報性の原理を活かす』
人は、聞かれたら答える生き物です。 街で「すみません、駅前の交番はどちらですか」と聞かれたら、知っていれば、つい答えてしまいますよね。「答えたら、いくらくれるんですか」なんて言う人は、まずいません。 だから、質問すること自体は、そんなに怖がらなくて大丈夫です。ただ、聞かれたら答えてはくれても、本音まで話してくれるかどうかは、また別の話なんです。 たとえば、初対面の相手にいきなり「若いころ、どんな失敗をされましたか」と聞いたらどうでしょう。相手にしてみれば、「なんで5分前に会ったばかりの人に、そんな恥ずかしい話をしなきゃいけないんだ」という気持ちになりますよね。 そこで僕が使っているのが、「返報性の原理」です。 人は、何かをしてもらうと、お返しをしたくなる。贈り物をもらったら、お返しを考える。あいさつをされたら、あいさつを返す。アメリカの心理学者チャルディーニが、人を動かす原理の一つとして紹介したものです。 会話にも、これがそのまま当てはまります。こちらが先に自分のことを話すと、相手も「じゃあ、自分も」と話したくなるんです。 さっきの質問なら、こう
10月28日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#037『場の空気づくりこそ、一番大事な準備』
相手について調べる。質問を組み立てる。身なりを整える。約束より早めに着く。この連載では、会話の前の準備を、ここまで一つずつお伝えしてきました。 では、その中でいちばん大事なのはどれか。そう聞かれたら、僕は迷わず「場の空気づくり」と答えます。 下調べが完璧でも、質問がよくできていても、場の空気がかたいままだと、相手は本音を話してくれません。逆に言えば、下調べも、質問を先に送っておくことも、清潔な身なりも、全部は「この人になら話してもいいかな」という空気をつくるためにある。僕は今、そう考えています。 そして、その空気をつくる出発点は、意外なことに、相手ではなく自分自身なんです。 人の気持ちは、うつります。こちらが緊張していれば、相手もかたくなる。こちらが楽しんでいれば、相手もだんだん楽しくなってくる。だから僕は、自分の心を整えることを、準備のいちばん最後の仕上げにしています。 インタビューが始まったら、場の流れはすべてインタビューライターが引き受けることになります。とても集中力のいる仕事です。野球のバッターが打席に入る前に、決まった動作で気持ちを整え
10月27日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#036『心をつかむ自己紹介を、何パターンか用意しておく』
初対面の場で、必ずやってくるのが自己紹介の時間です。 インタビューでも、名刺を交換して、席について、本題に入る前に、30秒ほど自分のことを話す場面があります。この30秒が、実はそのあとの1時間の空気を決めてしまうくらい、大事な時間なんです。 僕には、鉄板の自己紹介ネタがあります。名字の話です。 「五十嵐」と書いて、ふつうは「いがらし」と読みますよね。でも、僕の生まれた新潟の一部では、濁らずに「いからし」と読むんです。このあたりが五十嵐という名字の発祥の地とされていて、よそへ広がっていくうちに濁ったのだそうです。NHKの番組でも紹介されたので、フェイクではありません。 名刺もひらがなで「いからし」と書いているので、たいていは相手のほうから「あれ、濁らないんですね」と聞いてくれます。そこでこの話をすると、だいたい笑いが起きて、場がふっとやわらぐんです。 ここで大事なのは、これがたまたまうまくいった話ではない、ということです。笑ってもらえるように、ちゃんと計算して用意しているネタなんです。プロの自己紹介は、いわば「仕込み」なんですね。...
10月26日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#035『本題に入る前に、雑談で場をあたためる』
初対面の相手と向き合ったとき、緊張しているのは、こちらだけではありません。相手もまた、「何を聞かれるんだろう」と、少し身構えています。 そこへいきなり「では早速ですが、起業のきっかけから教えてください」と切り出したらどうでしょう。まるで、取調室で事情を聞かれているような気分になってしまいます。 第3回でお伝えしたとおり、会話は取り調べではありません。だから僕は、本題に入る前に、少しだけ雑談をはさむようにしています。 第24回で、1時間の取材のうち、最初のあいさつに5分ほどかかるとお伝えしました。その5分の中身が、実はこの雑談なんです。話題選びのコツは、相手がすぐに答えられること。そして、できれば、その場で目に入ったものから拾うことです。 前回お話ししたように、30分前に着いていると、自然と話題が手に入ります。駅からの道に、行列のできたパン屋さんがあった。ロビーに、立派な船の模型が飾ってあった。「あの船の模型、もしかして社長のご趣味ですか」。そう聞くと、相手の顔がぱっとほころんで、思いがけない話が始まることがあります。ときには、その雑談の中から、そ
10月23日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#034『約束の時間より、少し早めに着いておく』
取材の日、僕は約束の30分前には、現地に着くようにしています。 こう言うと、ずいぶん心配性だと思われるかもしれません。でも、30分前に着いて、損をしたことは一度もないんです。 たとえば、夏の取材。駅から走って、汗だくのまま相手の前に座ったらどうなるか。ハンカチで汗をふきながら、頭の中は「こんなに汗をかいて、どう思われているだろう」でいっぱいになります。そうなると、もう質問どころではありません。 建物の入り口が分からない、ということもよくあります。地図アプリが示す場所に入り口がない。やっと見つけたと思ったら、暗証番号を押さないと開かない扉だった。約束の時間が迫る中、あわてて先方に電話をかける。それだけで、最初の数秒の印象は、かなり危うくなってしまいます。 だから僕は、着いたらまず、取材先のビルの前まで行きます。入り口はここ、エレベーターで上がれる、と確かめたら、いったん外に出る。近くの喫茶店や公園でひと息ついて、質問を見直し、頭の中で話の流れをなぞります。最後に、トイレの鏡で髪や襟元をさっと確かめて、受付に向かうのは約束の少し前。早く着きすぎて、相
10月22日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#033『会う相手や場面に合わせて、服装を変える』
インタビューに行くときは、いつもスーツにネクタイ。そう思われがちですが、実は僕、相手によって服装をかなり変えています。 大きな会社の社長さんや会長さん、政治家の方、芸能人の方にお会いするときは、ジャケットにネクタイ。格式のある場でラフな格好をしていたら、それだけで失礼になってしまいます。 一方で、課長さんや現場の社員さんなら、ネクタイなしのビジネスカジュアル。クリエイターの方なら、ジャケットの下はTシャツ。 学生さんなら、ポロシャツやTシャツで行くこともあります。学生さんの取材にネクタイをしていくと、どうなるか。相手から見ると、どうしても就職の面接官のように見えてしまうんです。すると、すっかりかしこまって、当たり障りのない答えしか返ってこなくなります。だから、あえて普段着に近い格好で行って、「大丈夫、今日は仲間みたいなものだから」という空気をつくるようにしています。 ファッション関係の方を取材するときは、また少し違います。普段の僕は黒っぽい服ばかりなんですが、そういう日は、あえて青いタートルネックを選んだりします。相手は色や形を見るプロです。「こ
10月21日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#032『相手が話しやすい、清潔感のある身なりを選ぶ』
インタビューの現場で、僕が着ないと決めている服があります。派手な柄のシャツです。 おしゃれが嫌いなわけではありません。理由は、わりと単純です。相手が僕の服を見て、「この柄、どこで買ったんだろう」なんて考え始めたら困るからです。せっかくの大事な話の最中に、相手の気持ちを、ほんの一瞬でもよそへ向かせたくないんです。 インタビューライターは、言ってみれば黒子です。主役はあくまで、話してくれる相手。黒子が舞台の真ん中で目立っていたら、お芝居は台なしになってしまいますよね。 では、何を着ればいいのか。いちばん大事なのは、高い服でもブランドでもなく、清潔感です。 アイロンのかかったシャツ。磨いた靴。整えた髪。どれも当たり前のことばかりです。でも、どんなに上等なジャケットでも、シワだらけだったり、袖口が汚れていたりすると、それだけで「この人、大丈夫かな」と思われてしまいます。第20回で、身だしなみも準備のうち、とお伝えしたのは、そういうことなんです。 これは、仕事の場に限った話ではありません。部下と面談するとき、よれよれのシャツで、寝ぐせのついたまま向き合った
10月20日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/第一印象・場づくり編/#031『第一印象は、最初の数秒で決まる』
インタビューは、最初の質問をする前から、もう始まっています。 応接室のドアが開いて、相手と目が合う。その瞬間、相手の頭の中では「この人に、どこまで話そうかな」という目盛りが、すっと決まってしまうんです。 心理学では、人の第一印象は、出会ってからほんの数秒、長くても20秒ほどでできあがると言われています。しかも、一度できた印象は、なかなか書き換わりません。 最初に「なんだか話しにくそうな人だな」と思われてしまうと、そこから挽回するのは、向かい風の中を自転車でこぐようなものです。 思い返してみてください。新しく担当になった営業さん、初めて行った病院の先生、引っ越しの見積もりに来た業者さん。名前を名乗られる前に、「あ、この人なら大丈夫そう」「ちょっと苦手かも」と、なんとなく感じていませんか。 その数秒で、相手はまだ、こちらの話を一言も聞いていません。判断の材料になっているのは、表情、立ち姿、身なり、そして最初のあいさつの声の調子。ほとんどが、言葉より手前にあるものです。就職の面接で「入ってくるところが勝負」とよく言われるのも、同じ理由です。...
10月19日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#030『「なぜ?」を連発せず、言い換える』
泣いている子どもに「なぜ泣いているの?」と聞いても、なかなか答えは返ってきません。でも、しゃがんで「どうしたの?」と声をかけると、しゃくりあげながらも、ぽつりぽつりと話してくれたりします。 大人も、実は同じなんです。「なぜ」と聞かれると、人は「ちゃんと理由を説明しなければ」と身構えます。そして、頭の中で話をきれいにまとめてから答えようとする。すると返ってくるのは、「つまり、お客さまの笑顔のためです」といった、整ってはいるけれど、どこかで聞いたことのあるような答えです。 しかも、「なぜ」が続くと、会話はだんだん取り調べのような空気になっていきます。「なぜそうしたんですか」「なぜそう思ったんですか」「なぜ諦めなかったんですか」。聞いている側に悪気はなくても、相手は少しずつ心を閉じていってしまうんです。 そこで僕は、「なぜ」を別の言葉に言い換えるようにしています。 「なぜ起業しようと思ったんですか」ではなく、「起業を決めた瞬間って、覚えていますか。そのとき、どんな状況でしたか」。「なぜ諦めなかったんですか」ではなく、「いちばん諦めたくなったのは、いつで
10月16日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#029『「誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どうやって・どのくらい」の切り口を持っておく』
中学校の英語の授業で、5W1Hという言葉を習った方は多いと思います。 「誰が(Who)・何を(What)・いつ(When)・どこで(Where)・なぜ(Why)・どうやって(How)」。僕はこれに「どのくらい(How much)」を加えた5W2H、7つの切り口を、いつも頭の片隅に置いて話を聞いています。 「どのくらい」は、量や金額ならHow much、数ならHow many、期間ならHow longと、聞きたい中身によって言い方が変わります。なんだ、そんな基本的なこと、と思われるかもしれません。でも、基本だからこそ、いざというときに頼りになるんです。 たとえば、ある社長さんが、ふと「実は一度、会社を潰しかけたことがあるんですよ」と口にしたとします。話を聞く側としては、ここが踏ん張りどころです。まずは「そのとき、どういう状況だったんですか」。返ってきた答えに、「それは、いつ頃のお話ですか」。「創業して1年目くらいかなあ」「そんなに早い時期だったんですね」。さらに「そのとき、支えてくれた人はいましたか」「どうやって乗り越えたんですか」「どのくらい追い
10月15日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#028『質問は短く、シンプルに』
大勢の記者が一人の方を囲む、合同取材の場でのことです。 ある大手新聞社のベテラン記者さんが、質問を始めました。「この業界は、ここ数年こういう流れになっていて、私はこう見ているんですが、特にこの点については、これこれこういう事情もありますよね。そこで、なんですが……」。 前置きは、たっぷり2分ほど続きました。ようやく最後に「この件については、どうお考えですか」。 取材を受けていた方は、苦笑いしながら「ええと、何についてお答えすればいいでしょう」。隣で聞いていた僕も、心の中で、思わず同じことをつぶやいていました。 質問が長くなるのには、だいたい理由があります。失礼のないように丁寧に聞こうとする。あるいは、自分もこれくらいは知っていますよ、と示したくなる。 そしてもうひとつ、意外と多いのが、何を聞けばいいのか迷っているときです。次の質問が決まらないまま口を開いてしまい、話しながら考える。前置きが、実は時間稼ぎになっているんですね。正直に言うと、僕にも覚えがあります。 どれも気持ちは分かりますし、迷ってしまうのは仕方のないことです。でも、そんなときでも、
10月14日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#027『一度に複数のことを聞かない』
記者発表会に行くと、ときどき「三つ質問させてください」と手を挙げる記者さんがいます。大勢の記者が限られた時間を分け合う場なら、それもひとつのやり方です。でも、一対一で向き合う会話で同じことをすると、たいていうまくいきません。 たとえば、こんなふうに聞いたとします。「始めたきっかけは何ですか。大変だった時期は、どうやって乗り越えたんですか。これから、どうしていきたいですか」。聞かれた側は、まず「どれから答えよう」と考えるところから始めなければなりません。 そして、たいていは一番最後の質問か、一番答えやすい質問にだけ答えて、残りはどこかへ消えてしまいます。せっかく用意した質問が、三つのうち二つ、無駄になってしまうんです。 家庭でも、似たような場面がありますよね。帰ってきた家族に「おかえり。今日どうだった? ご飯は食べた? 明日も早いの?」。返ってくるのは「うん」のひと言。どの質問への「うん」なのかも、よく分かりません。 白状すると、駆け出しの頃の僕も、よくこれをやっていました。相手が考え込んで黙ると、その沈黙が怖くて、つい「あ、それとも……」と次の質
10月13日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#026『「はい/いいえ」で終わる質問より、自由に語れる質問を選ぶ』
「学校、楽しかった?」「うん」。 親子の会話が、これでおしまい。お子さんがいる方なら、きっと覚えがあると思います。 「はい」か「いいえ」で答えられる質問を、クローズドクエスチョンと言います。答える側はラクですが、話はそこで止まってしまいます。 そこで、聞き方を少しだけ変えてみます。「今日、学校でいちばん笑ったのはどんなこと?」。こう聞かれると、「うん」では答えられません。相手は、今日一日の場面を思い出しながら、自分の言葉で話し始めてくれます。こちらは、自由に語れる質問。オープンクエスチョンと呼ばれるものです。 取材の現場でも、僕はいつもこの切り替えを意識しています。 「起業したのは10年前ですか?」ではなく、「起業されたのは、どんなタイミングだったんですか?」。「お仕事は楽しいですか?」ではなく、「この仕事のどんなところに、やりがいを感じますか?」。 言葉にすると、ほんの少しの違いです。でも、返ってくる話の量と温度は、まったく違います。「楽しいですか?」と聞くと、たいてい「ええ、楽しいですよ」で終わる。「どんなところが」と聞くと、「実はこの前、お
10月9日


インタビューのプロがやっている100の聞き方/質問の組み立て編/#025『質問は「最終的に何を知りたいか」から逆算してつくる』
質問をつくるとき、僕はまず、ゴールを決めます。この会話が終わったとき、自分は何を知っていたいのか。そこから逆算して、質問を考えていきます。 この順番を間違えて、痛い目を見たことがあります。 グルメ雑誌で記事を書いていた頃の話です。ある洋食屋さんのシェフに、看板メニューのハンバーグについて取材しました。ところが、シェフの修業時代の話があまりに面白くて、すっかり夢中になってしまったんです。フランスでの皿洗いの日々、親方に怒鳴られた話、帰国して店を開くまでの苦労……。 3日後、意気揚々と原稿を書こうとして、青ざめました。肝心のハンバーグの話を、ほとんど聞いていなかったんです。結局、シェフに電話をかけ直して、「すみません、ひき肉の配合を教えてください」と頭を下げることになりました。お恥ずかしい限りです。 修業時代の話は、決して無駄ではありません。でも、その日のゴールは「ハンバーグのおいしさの秘密」でした。ゴールを見失ったまま、楽しい寄り道をずっと続けてしまったわけです。 この業界では昔から「10聞いて、使えるのは1」と言われます。でも、たくさん聞けばいい
10月8日
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