「インタビューのプロがやっている100の聞き方」心の持ち方編 #005〜#009
平日の朝、きいてかく合同会社代表でプロインタビューライターのいからしひろきが、XなどのSNSに投稿している「聞く」ためのエッセンスを、週末にまとめています。(各原稿は「魅力引き出しインタビュアー養成講座」のテキストや講義の音声データをもとにAIを活用して作成しています)
インタビューのプロがやっている100の聞き方/心の持ち方編/#005
『人の魅力は「ギャップ」に宿る』

ここまで4回、聞く側の心構えについてお伝えしてきました。今日は少し角度を変えて、「相手の魅力の見つけ方」についての話です。
インタビューをしていて、思わず前のめりになる瞬間が僕にはあります。それはたいてい、「え、そんな一面があったんですか」と、こちらの予想が良い意味で裏切られた瞬間です。頭の中で描いていたその人の色が、一瞬でガラッと塗り替えられる感覚、と言えばいいでしょうか。
以前、強面で無口な工場の社長さんに取材したことがあります。最初は「怖い人だな、話が続くだろうか」と正直、身構えていました。ところが、若い頃に始めた事業が一度潰れた話になった途端、その方の目から涙がこぼれたんです。「あの時、従業員に頭を下げたことが、今でも忘れられない」と。強面な第一印象と、涙を流すほど情に厚い素顔。そのギャップに、僕はすっかり引き込まれてしまいました。
人の魅力は、一貫した人柄の中にあるとは限りません。むしろ、「見た目や第一印象」と「話を聞いて見えてくる素顔」との差にこそ、強く宿るものです。
だからこそ、聞く側にできる小さな工夫があります。会った瞬間に感じた第一印象を、自分の中で軽く言葉にしておくことです。「物静かそうな人だな」「気が強そうだな」。そのうえで話を聞きながら、その印象とズレる瞬間を探してみてください。「今のお話、意外でした」と、そのまま言葉にして返してもいい。相手は、自分でも気づいていなかった一面を、あなたに見つけてもらったような気持ちになるはずです。
そのギャップに出会えた時が、話を深掘るチャンスです。
(きいてかく合同会社代表/プロインタビューライター いからしひろき)
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インタビューのプロがやっている100の聞き方/心の持ち方編/#006/
『昔と今の変化に注意して話を聞く』

前回、人の魅力は「ギャップ」に宿るとお伝えしました。実はこのギャップ、「時間の変化」にも現れます。
「今、どうですか」とだけ聞いても、話は平坦になりがちです。というか、今のことなんて誰もわかりません。当事者すぎて。言語化も難しい。ところが、「昔はどうでしたか」「以前と比べて、何が一番変わりましたか」と聞いた途端、饒舌になって、話に奥行きが出てきます。
以前、老舗の和菓子屋のご主人に話を聞いたときのことです。「今の経営で工夫していることは」と聞いても、答えはそっけないものでした。「お客様のために一生懸命やっています」と。ところが「先代の頃と比べて、店はどう変わりましたか」と聞き方を変えた瞬間、表情がふっと変わったんです。「先代は頑固で、新しい味を一切許さなかった。でも自分の代になって、初めて洋菓子の技法を取り入れてみたら、お客様に予想外に喜んでもらえて」。そこから、親子の葛藤と挑戦の話が、堰を切ったように出てきました。
「今」という一点だけを見ていると、その人がどれだけの距離を歩いてきたかは見えません。過去と今を並べて初めて、その差分に、その人らしさやドラマが浮かび上がってくるんです。
経営者に限った話ではありません。子育てをしているお母さんに「産まれたばかりの頃と、今とで何が変わりましたか」と聞いてもいいですし、1on1なら、部下に「入社した頃の自分と、今の自分を比べてどうですか」と聞いてもいいでしょう。「昔」と「今」を持っていない人はいませんから。
聞くことに迷ったときは、「今」だけでなく、少し時間を巻き戻して「昔」のことをみてください。そこに、思いがけない話が眠っています。
(きいてかく合同会社代表/プロインタビューライター いからしひろき)
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インタビューのプロがやっている100の聞き方/心の持ち方編/#007
『自分の聞きたいことより、まず相手が話したいことを優先する』

インタビューは会話を一緒に作り上げていく共同作業だと、第3回でお伝えしました。ただ、優先順位はあります。あくまでもその会話は、インタビュー相手に気持ちよく話してもらうために行うものだからです。
聞く側はどうしても、事前に用意した質問や、自分が話したい話題に気を取られがちです。「この流れで、あの質問をしなきゃ」──そう考えているとき、意識は既に相手ではなく、自分に向いています。
僕自身、駆け出しの頃によくやってしまった失敗があります。取材前に用意した質問リストの順番を、後生大事に守ろうとしすぎたんです。相手が思いがけない話を始めても、「なるほど。ところで次の質問ですが……」と、無理やり予定していた質問に戻してしまう。今思えば、面白い話の芽を、自分の手で摘んでいたようなものです。
本当に大切なのは、相手の目が輝く話題を見つけたら、用意していた予定を崩してでも、その話を深掘りする勇気を持つことです。相手が急に前のめりになって話し始めたら、それは間違いなく、その人にとって語りたいことがある証拠。そこに乗るべきなんです。
商談でも同じことが起こります。こちらが伝えたい商品説明ばかりを優先していると、相手が本当に困っていることには、いつまでも辿り着けません。相手が思わず口にした一言に、新たな質問を被せてていく。それだけで、聞ける話の深さはまったく変わってきます。
自分の聞きたいこと、話したいことは、いったん脇に置いておく。それくらいの余裕が、相手の一番いい話を引き出します。
(きいてかく合同会社代表/プロインタビューライター いからしひろき)
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インタビューのプロがやっている100の聞き方/心の持ち方編/#008
『AI時代こそ、人から直接聞き出す力が武器になる』

「AIがあれば、大抵のことは調べられるのに、わざわざ人に話を聞く意味なんてあるんですか」。最近、そう聞かれることが増えました。
正直に言うと、経歴や実績、過去の出来事といった事実だけなら、今の時代、AIでかなりのところまで調べがついてしまいます。便利になったものだと、僕自身も日々感じています。
でも、調べれば分かることと、会って初めて聞けることは、まったく別物です。
その人が、ある決断をした瞬間、どんな気持ちだったのか。言葉に詰まりながら話す間、声のトーンがどう揺れるか。「実はあの時……」と、少し声を落として語り出す、その空気そのもの。こういうものは、いくらAIが発達しても、答えてはくれません。本人の口から、その場で聞くしかないんです。
だとすれば、これからの時代に求められる聞く力は、はっきりしてきます。調べれば分かることはAIに任せて、その分、目の前の人にしか聞けない部分に、じっくり時間を使う。二次情報を集める労力が減った分、一次情報を引き出す時間を増やせる。そう考えると、AIは聞く側にとって、決して脅威ではなく、むしろ味方なんです。
この「AIとどう付き合うか」というテーマは、シリーズの後半で改めてじっくりお伝えします。今日はひとまず、一つだけ覚えておいてください。誰でも世界中の情報にアクセスできる時代だからこそ、直接会って目の前の人から聞き出した情報の価値は、下がるどころか、上がっていくということを。
(きいてかく合同会社代表/プロインタビューライター いからしひろき)
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インタビューのプロがやっている100の聞き方/心の持ち方編#009
『プロとアマの違いは、話を聞き切るチカラ』

質問すること自体は、実はそれほど難しくありません。誰でも、思いついたことを聞けばいいんです。では、プロと呼ばれる人と、そうでない人との違いはどこにあるのか。
アマチュアの聞き方は、聞いて終わりです。話を聞いて、「いい話だったな」で完結してしまう。一方でプロは、聞いた話をどう料理して、どう読者や相手に届けるかを前提に話を聞いています。単に粘り強く聞くこととは、少し違います。
僕らの業界には「取れ高」という言葉があります。原稿を書くのに十分な材料が取れたかどうか、ということです。話を聞きながら頭の片隅で、「これで記事は成立するか」「読者に届けられる分の材料は揃ったか」を常に計算しています。もし取れ高が足りないと感じたら、予定していた時間を延長してでも聞かなければいけませんし、最悪の場合は、後日改めて追加で取材をお願いすることもあります。
もちろん、毎回そんなことをしていては、相手にも負担をかけてしまいます。だからこそ本来は、限られた1時間なら1時間の中で、しっかり取れ高を確保しきるスキルこそが求められます。とはいえ、これがなかなか難しくて、僕自身、今でも「もう少し聞いておけばよかった」と反省することがあるのですが……。
これは、取材の場に限った話ではありません。友人との会話でも、部下との1on1でも同じです。聞いた後に何をするかを考えて聞くと、会話に着地点が見えます。着地点が見えれば、何を聞くべきかも、何を話すべきかも明確になってくるので、驚くほど会話が弾みます。結果的に「いい話ができたな」「この人と話すと楽しいな、気持ちいいな」という充実した空気がその場を満たします。
逆に、話がどこに着地したのか分からないまま終わってしまうと、聞いたほうも話したほうも、どこかモヤモヤした気持ちが残ってしまいます。「何のために話したんだ?」「無駄な時間だったな」と。だからこそ、どこを会話の着地点にするかという意識を、日頃から持っておくことが大事です。
大事なのは、「聞けた」で満足しないことです。何のために聞いているのか。その話を、この先どう活かすのか。そこまで見据えて時間内に聞き切るチカラの有り無しが、プロとアマを分けています。
(きいてかく合同会社代表/プロインタビューライター いからしひろき)




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