試合をしないテニスが、こんなに楽しいとは──1年続けて気づいたこと
※この記事は、名刺交換をさせていただいた方へ毎週水曜日にお届けしているメールマガジン「きいてかく通信」(vol.23/2026年10月28日配信)の内容を転載したものです。
実は1年ほど前から、テニススクールに通っています。
きっかけは子どもの習い事でした。最初は付き添いで、コートの外から眺めているだけ。そのうち自分もやりたくなって、妻と一緒に入会しました。ところが妻は早々に退会。子どもも塾通いが忙しくなり、気づけば今は僕ひとりが通っています。
テニスは、それまで一度もやったことがありませんでした。いえ、正確には子どもに付き合ってソフトテニスの壁打ち相手をしたことはあるのですが、硬式テニスはまったくの初めてです。
そもそも、道具を使うスポーツ自体が初めてでした。小学生と高校生のときはバレーボール、中学生のときはバスケットボール。手で直接ボールを扱う球技ばかりやってきました。小学生の頃に野球遊びはしていましたが、バッターボックスで構えて打つ野球と違い、テニスは動きながらボールを打たなければなりません。
そのせいか、体の横でボールをとらえる感覚になかなか慣れませんでした。ボールが来ると、どうしても体の正面に迎え入れてしまい、スイングが詰まってしまう。そんな失敗がずっと続いていました。
それが1年(レッスンは週1回程度)たって、ようやく「体の横でとらえる」感覚が体に染みついてきました。
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この「体に染みつかせる」ということは、仕事にも通じる気がします。
僕の場合は「聞いて書く」ことですが、最初はやはり慣れず、いちいち頭で考えていました。でも今は、体が勝手に動きます。正確には、脳が勝手に動く。考えなくても最初の問いが出てくるし、返ってきた答えに条件反射で次の質問が出てくる。
書く作業も同じです。書き出しやまとめ方で迷うことは、ほぼなくなりました。考え込んでもあまりいい言葉が浮かばないことを、経験的にわかっているからです。むしろ、ぱっと浮かんだ言葉のほうがよかったりします。
みなさんのお仕事でも、同じようなことはありませんか。
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テニスの話に戻ると、1年通って、いまだに正式な試合をしたことがありません。やるのはレッスン中のゲーム形式の練習だけ。それでも、楽しいんです。
もちろん、まだまだ下手っぴで、サーブもろくに入らないので試合にならない、というのもあります(笑)。でも、ただ来た球を打ち返すだけでも楽しい。
これは、車の運転に近いのかもしれません。自分の体を自分で制御しながら、ボールという別の物体をコントロールする。つまり「操る」楽しさです。それだけで、十分に娯楽になります。
実は娘は、もともと地域のテニスクラブに入っていたのですが、「試合に勝つぞ!」という雰囲気になじめずに辞め、代わりにスクールに通い始めたという経緯があります。スクールはレッスンだけなので、対外試合はありません。
最初は「試合をしないで楽しいのかな?」「スポーツは勝ち負けがあってこそだろう」と思っていました。でも今なら、その気持ちがよくわかります。
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世の中的にも「競わないスポーツ」が人気を集めているそうです。
走りながらスイーツを食べるスイーツマラソン、ブドウ畑の中を走りながらワインを味わうワインラン、カラフルなパウダーを浴びながら走るカラーラン……。それってスポーツなの? それとも食べ歩き・飲み歩き? と突っ込みたくなるものもありますが、単純に楽しそうです。
運動が苦手な人でも楽しめる新しい競技を考案する「ゆるスポーツ」という取り組みもあり、2015年には「世界ゆるスポーツ協会」も設立されています。
そもそも「スポーツ(sport)」は、ラテン語の「deportare(日常から離れる)」に由来し、もともとは「気晴らし」「遊び」を意味する言葉だったといわれます。チェスやビリヤードがスポーツとして扱われるのも、その流れでしょう。実際、どちらもアジア大会の競技として実施されたことがあります。
先日の愛知・名古屋アジア大会では、eスポーツの「ぷよぷよ」で、11歳の小学5年生・栗原悠輝選手が金メダルを獲得しました。eスポーツで日本勢初の金メダル、しかもアジア大会史上最年少のメダリストです。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
昭和世代の僕らには「スポーツ=勝負事、鍛錬」というイメージがありますが、そうしたスポーツの概念も、これから変わっていくのかもしれません。そのおかげで、もっとスポーツに親しめる人が増えるといいですね。
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五十嵐裕樹(いからしひろき)
きいてかく合同会社



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