「やってみせ」から始めたら、講座の空気が変わった──人が育つ「順番」の話
※この記事は、名刺交換をさせていただいた方へ毎週水曜日にお届けしているメールマガジン「きいてかく通信」(vol.24/2026年11月4日配信)の内容を転載したものです。
マニュアルを渡して、丁寧に説明もした。それなのに、いざ現場に出ると思うように動いてもらえない。社内の研修やOJTで、そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先日、そのヒントになりそうな場面がありました。
10月29日、私が講師を務める「魅力引き出しインタビュアー養成講座」の第4期が始まりました。今期のテーマは「魅力ってなに?」。書くことはAIにある程度任せられる時代になりました。では、人間のインタビュアーは何を引き出せばいいのか。肩書きや経歴なら、検索すれば出てきます。引き出すべきは、その人の口からしか出てこない言葉です。本人すら気づいていなかった「あるべき姿」と、これからの「ありたい姿」。今期は半年かけて、そこを掘り下げていきます。
その初回で、少し思い切ったことをやってみました。講義もそこそこに、私が受講生のお二人を、一人30分ずつ、その場でインタビューしたのです。
受ける人は「自分の魅力って何だろう」と考えながら答える。見ている人は、私がどう聞き、どんな答えが出てきたかを観察する。これが、思っていた以上に良かったのです。
───
インタビューの合間に、見ていた受講生から質問が飛んできました。
「あんなにたくさんの経歴を聞いていたのに、『この仕事の次は〇〇でしたっけ?』とすっと話をつないでいた。あれはどうやって覚えているんですか?」
答えは単純で、気になったキーワードを単語だけメモしています。録音は機械に任せて、私は相手の顔を見て話す。テキストにも書いてあることです。でも、目の前でやっているのを見たあとだと、伝わり方がまるで違いました。
───
インタビューを受けた側の感想も、面白いものでした。
私はあえて、少し聞きづらいことにも踏み込みました。すると受講生の一人が、こう言ったのです。「聞かれるだろうなとは思っていた。むしろ聞かれなかったら、『あれ、聞かれないのか』と思っていたはず」。
聞いてほしくないだろうから、聞く。これは私がいつも講座で話していることです(もちろん、本当に嫌なことを聞いてはいけません)。けれど、「失敗談や苦労話にこそ魅力がある」と言葉で説明するより、本人が実際に聞かれて、答えて、その手応えを感じるほうが、よほど腑に落ちます。
もう一人の受講生は「なるほどの連続でした」と言ってくれました。興味を持って聞いてもらえていると感じたこと、「それは大変でしたね」という一言にほっとしたこと。受ける側に立ってはじめて、聞き手の何が効いていたのかがわかるのだと思います。
───
今回、ふと思い出した言葉があります。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
旧日本海軍の連合艦隊司令長官、山本五十六の言葉として知られる、人材育成の格言です。講座に当てはめると、こうなります。
・やってみせ:第1回で、私が受講生をインタビューしてみせる
・言って聞かせて:これからの回で、その裏にある考え方や技術を解説する
・させてみせ:受講生同士で、実際にインタビューをしてもらう
・ほめてやらねば:課題やインタビューに、しっかりフィードバックを返す
大事なのは、この順番なのだと思います。泳ぎ方の本をいくら読んでも、泳げるようにはなりません。まず実感する。そのあとで「なぜ、ああしたのか」を解説する。この順番だからこそ、具体的な説明がすっと入っていきます。
これは、インタビューに限った話ではないはずです。営業の同行でも、部下との1on1でも、いきなり「言って聞かせて」から始めても人は動きません。まず、教える側が本気でやってみせる。今回、受講生のお二人が想像以上に深く話してくれたことで、私自身もそれをあらためて実感しました。
次回は11月20日。いよいよ受講生同士でインタビューをしてもらいます。私とは違う人が聞いたら、どんな魅力が浮かび上がるのか。私が聞き出せなかった話が出てくるかもしれません。今から楽しみです。
当日の様子は、noteにも書いています。よろしければご覧ください。
▼ note(きいてかくひと/いからしひろき)
https://note.com/squidmania
社内で「聞く力」を磨きたい企業・団体様からのご相談も、個別に承っています。お気軽にご連絡ください。
hello@kiitekaku.com
───
メールマガジン「きいてかく通信」では、取材のこぼれ話やビジネスに役立つ情報を、毎週1回ゆるっとお届けしています。これまで名刺交換をさせていただいた方を中心にお送りしていますが、購読をご希望の方は hello@kiitekaku.com までお気軽にご連絡ください。
五十嵐裕樹(いからしひろき)
きいてかく合同会社




コメント