きいてかくタネ14粒め:「出版社とライターの間にある”見えない壁”を考える」
- きいてかく合同会社代表_いからしひろき
- 2月26日
- 読了時間: 4分

こんにちは、きいてかく合同会社代表のいからしひろきです。
今日、「きいてかくクルー」の女性ライター限定グループ「ことりの巣箱」のメンバーを対象に、F出版社の女性M編集者Mさんをお招きしたオンラインお茶会を開催しました。77分に及ぶ濃密な対話の中で、ブックライティングの世界の実情や、なぜ「ブックライターになりたい人」と「ライターを探している編集者」がなかなか出会えないのかという謎が明らかになりました。
## ブックライターとしての課題
お茶会では、まず著者と文章の関係について興味深い指摘がありました。多くの著者は話すのが上手でも、それを文章化するのは難しいものです。
「言語化と文章化はまったく別のスキル」という言葉が印象的でした。著者の話を聞き、それを読みやすい文章に変換するのがブックライターの腕の見せどころ。ここに編集者とライターの役割の重要性があります。
## 良いライターの条件とは?
編集者が求める「良いライター」の条件も明らかになりました。
1. 掘り下げる力──取材時に話を広げられる質問力
2. 読者目線を持つこと──第三者として著者の話を客観視できる視点
3. 適度な専門知識──業界の基礎知識と専門知識のバランス
特に「読者目線」については、編集者自身が著者と近すぎる関係になりがちなため、ライターには新鮮な目で質問してほしいという声がありました。一方で、専門知識については「専門的すぎても困る」という興味深い意見も。あくまで一般読者の立場で理解できる文章にすることが大切なのです。
## 出版プロセスの実際
ブックプロジェクトの流れも具体的に説明されました。企画から出版まで約8-10ヶ月かかり、ライターの関与期間はそのうち約4ヶ月。取材は通常2-3時間を5回程度(計10-15時間)行い、Zoomでの取材が主流になっているとのこと。
執筆はまずサンプル原稿(第1章など)を提出し、OKが出たら全体を執筆。その後、編集者チェック→著者チェック→修正→ゲラ確認という流れで進みます。
## なぜブックライターになれないのか?「見えない壁」の正体
そして最も興味深かったのは、ブックライターになりたい人と編集者の間にある「見えない壁」の正体についての議論です。
参加者の一人が「ブックライティングやりたいですという売り込みを受けたことはありますか?」と質問したところ、編集者は「一度もない」と即答。通常のWeb記事や雑誌記事では自己売り込みが当たり前なのに、なぜかブックライティングだけはそうした売り込みがなく、紹介制が主流なのです。
この「見えない壁」の理由として挙げられたのが「リスク」の大きさ。単発記事と違い、本の制作は長期プロジェクト(8ヶ月以上)で大きな投資が必要です。途中でライターを変更するコストが高すぎるため、編集者は「実績」よりも「信頼感」を重視し、信頼できる人からの紹介でしか新人を採用しない傾向にあるのです。
さらに、著者との関係構築という特殊なスキルも求められます。「文章力だけでなく、著者に対して失礼にならない社交性や話し方」も重要な要素と言われました。
つまり、”なぜブックライターになりたい人は多いのに、編集者は「ライターがいない」と言い続けるのか”の答えは、お互いの間に、「信頼」という橋がないと渡れない深い溝があるからなのです。
## まとめ - 弊社の使命
この「見えない壁」の存在を知ることで、弊社「きいてかく合同会社」の存在意義がより明確になりました。それは、新人ライターが直面する「見えない壁」を越える手助けをすることです。
今回のお茶会は「きいてかく合同会社」と業務委託契約を結んだライター「きいてかくクルー」だけの限定イベントでした。このような業界の内側を知る機会をこれからも定期的に設けていきたいと思います。
ブックライターを目指す方で、クルーに興味を持たれた方は、ぜひきいてかく合同会社までご連絡ください。あなたのライターとしてのキャリアを一緒に築いていきましょう。
(文:いからしひろき)
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