フリーライターという職業を選んだ方々の多くが、いつか直面する悩み。それは原稿の「単価」についてである。私が先月Xで行ったアンケートでも「単価の上げ方」への関心は第2位を記録するほどだ。今回は、この永遠のテーマともいえる単価について、現場の実態とともに考えていく。
## 気になる原稿単価の相場
「一体、いくらが相場なの?」。これは駆け出しのライターさんからよく聞かれる質問である。弊社が受注する一般的な記事では、1万円から3万円程度が平均的な単価となっている。もちろん、4万円から5万円という案件も存在するが、残念ながらそれほど多くはない。それ以上の単価もたまにあることはあるが、まさに宝くじに当たるようなものだ。そう簡単には巡り会えないだろう。
なお、文字数については通常2,000字から4,000字程度が一般的である。ただし、弊社では基本的に文字単価での請負はしておらず、記事1本あたりでの料金設定が主流となっている。
## 単価アップへの道のり
「それでは、どうすれば単価を上げられるのか?」
結論から申し上げると、既存の案件で単価を上げるのは至難の業である。クライアント側には予算が決められており、交渉によって原稿単価を引き上げることは、ほぼ不可能といっても過言ではない。
ただし、まったく希望がないわけではない。例えば、特急料金や出張手当、特殊案件といったオプション加算を設定することで、若干の上乗せは可能である。とはいえ、これも交渉できる相手は限られており、増額幅もせいぜい3,000円から1万円程度にとどまる。
## 高単価案件を獲得するために
では、より良い収入を目指すにはどうすればよいのか。答えは意外にシンプルだ。最初から単価の高い案件を取りに行くしかないのである。
そのためには、「オンリーワン」になることが不可欠である。具体的には、以下のような方向性が考えられる。
まず、専門知識の獲得である。薬機法や美容、半導体といった特定業界の深い知識や、独自のネットワークを持つことで、他のライターとの差別化が図れる。
次に、特殊技能の習得である。例えば、インタビューのスキル。「経営者インタビューなら○○さん」という評価を得られれば、自ずとご指名案件が増えていく。これは必ずしも高単価とは限らないが、少なくとも一般的な単価より上乗せされる可能性は高くなる。
また、正確さとスピードも重要な要素である。修正が少なければ、クライアント側の工数も削減できる。ただし、この点を原稿料に反映してくれる発注者は残念ながら少ないのが現状だ。
さらに、ネームバリューの獲得も確実な方法の一つである。ただし、これは一朝一夕には実現できない。
最後に、案件選びも重要だ。広告案件や企業出版物など、予算規模の大きい仕事を選ぶという手もある。ただし、これらの案件では発注者の意向を全面的に受け入れる必要があり、原稿や取材の自由度は制限される。また、名前が表に出ないため、実績としてアピールできないというデメリットもある。
## バランス感覚が鍵を握る
結局のところ、オンリーワンの存在となり、迅速かつ正確な仕事をこなし、案件を適切に選別できれば、自然と単価は上がっていくものである。しかし、ここで一つ考えなければならない点がある。それは「やりがい」である。
つまらない仕事はモチベーションが低下し、結果的に生産性も下がってしまう。とはいえ、やりがいだけを追求するのもプロとしては適切とは言えない。「利益」と「モチベーション」のバランスを取ることが、長期的な成功への鍵となるだろう。
## 発想の転換で見えてくるもの
ここで一つ、おすすめしたい考え方がある。それは「コスパ・タイパ」(コストパフォーマンス・タイムパフォーマンス)を意識するというものである。原稿1本あたりの作業効率を2倍にできれば、実質的な単価も2倍になる計算だ。
これは、収入を2倍に増やすより支出を半分に抑える方が容易だという、家計の知恵にも通じる考え方である。単価アップを目指すなら、このような逆転の発想で問題に取り組むのも一案ではないだろうか。
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