## デジタル時代の新しい試み
先日、X(旧Twitter)で初めてスペース配信を開催した。スペースとは、ユーザー同士がリアルタイムで音声を通じて会話できる機能だ。パネルディスカッションやワークショップなど、様々な形で活用できる新しいコミュニケーションツールである。
今回の配信のきっかけは単純だった。これからの時代を担う若いライターたちに、私の経験から得た知恵を共有したいという思いからだ。特に今、AIの台頭により、ライターを取り巻く環境は厳しさを増している。だからこそ、一時的なテクニックやノウハウといった情報(Information)ではなく、経験に裏打ちされた本質的な知恵(Wisdom)が必要なのではないか。
私自身、20年以上にわたってライターとして生計を立ててきた。この経験から得られた知見は、これからの世代に少なからず価値があるはずだ。また、ライターエージェントを経営する立場として、「書けるライター」を増やすことは、業界全体の発展にもつながると考えている。
## アンケートが示す現場の課題
配信に先立ち、リスナーの関心事を探るためにXでアンケートを実施した。結果は興味深いものだった。
「案件の取り方」が41.7%でトップ、続いて「単価のあげ方」と「AIの活用方法」がともに29.2%という結果だった。この結果から、現場が抱える三つの課題が見えてきた。
1. クライアントとの接点がそもそもない
2. 接点があっても発注に至らない
3. 一度の案件で終わってしまう
これらの課題は、実は「恋愛」における課題と驚くほど似ているのだ。
## 恋愛に学ぶ案件獲得の秘訣
### 出会いの質が運命を分ける
クライアントとの出会い方は、恋愛における出会いと同じように重要だ。現代では、クラウドワークスのようなサービスやSNSを通じた案件獲得が一般的になっている。これは恋愛でいうマッチングサイトやナンパのようなもの。気軽である反面、相手の素性が分からないためリスクも高い。
一方で、伝統的な「お見合い」のような紹介システムには、現代でも大きな価値がある。身元がはっきりしており、仲介者の存在が双方の信頼関係を担保してくれるからだ。
私の経験では、良質な案件との出会いは「紹介」に限る。実際、私自身これまですべての仕事を紹介で獲得してきた。むしろ、積極的な営業活動は避けてきたほどだ。なぜなら、質の高いクライアントは、素性の分からないライターに安易に仕事を依頼することはないからである。
### 「オンリーワン」であることの重要性
案件を獲得できない二つ目の理由は、クライアントにとって「かけがえのない存在」になれていないことだ。これは恋愛で言えば、初回のデートにこぎつけられない状況に似ている。
クライアントがリソース(時間やお金)を投資したいと思うのは、そのライターが「オンリーワン」の存在だと感じた時である。面白い記事を作るという目的を達成するために、このライター以外には考えられないと思わせることができれば、自然と案件は舞い込んでくる。
重要なのは、必ずしも特別なスキルや資格が必要というわけではないということだ。私自身、特に専門的なスキルがあるわけではない。インタビューは得意だが、それも特別な資格があってのことではない。しかし、クライアントに「あなたしかいない」と思わせる独自の価値を提供できる「あり方」を見つけることで、継続的な仕事を確保できてきた。
## 継続的な関係構築のために
三つ目の課題、一度きりの案件で終わってしまう理由は単純だ。クライアントが成果物に満足していないのである。これは私自身も経験してきた課題だ。
フリーランスの難しさは、その不満の理由を直接聞くことが難しい点にある。明確なクレームがあれば、それは次への改善の糸口になる。しかし多くの場合、何も言われずに次の案件が来なくなるのだ。
この状況を打開するには、クライアントとの信頼関係づくりが欠かせない。100点満点の原稿を一発で書くのは至難の業だ。では、どうすればクライアントに「次もお願いします」と言ってもらえるのか。この点については、私自身も日々試行錯誤を重ねている。
## 新しい試みから見えてきたもの
初めての音声配信は、予想以上の収穫があった。弊社の提携ライターである「きいてかくクルー」のありむらさんと溝川さんを交えての真摯なディスカッション。子育て中のリスナーさんとの温かいやりとりなど、テキストだけでは得られない深い交流が生まれた。
特に印象的だったのは、普段はなかなかできない本音での議論ができたことだ。音声を通じたリアルタイムのコミュニケーションだからこそ、文字では表現しきれない熱量や想いが共有できたのではないか。
## これからの展望
手探りながらも、この場所から新しい気づきが生まれることを実感した。これからも毎週水曜日の夜8時から定期的に配信を続け、ライターの皆さんと共に成長していける場を作っていきたい。
今後は「紹介してもらう方法」や「営業をしてはいけない理由」、さらには「クライアントが満足する原稿の書き方」など、具体的なテーマについても深く掘り下げていく予定だ。
Xのアカウントはこちら https://x.com/igamania
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